『第8の習慣を語る』

『第8の習慣』を語る 第2回:ボイス







フランクリン・コヴィー・ジャパン 代表取締役社長
ウィリアム(ビル)・A・マッキンタイヤー

フランクリン・コヴィー・ジャパン 代表取締役副社長
竹村富士徳

竹村:「ボイス」という言葉は、単なる「声」ではなく、人間が本来持つ才能、人格すべてを含んだ、非常に深い意味を持っていますが、この「ボイス」についてどのように捉えていますか。

ビル:人は元来、4つのニーズを持っていることから考えなければならないでしょう。「生きること」「愛すること」「学ぶこと」そして「貢献すること」この4つのニーズは人が真の意味で成功するプロセスにおいて、必須の要素としてコヴィー博士が以前から提唱しています。この基本的なニーズを実現するために人は成長していくわけですから、そのニーズを明確にすることから始まるのではないでしょうか。

竹村:つまりこの4つのニーズを自分の中で明らかにし、その具体的な表明が「自分のボイス」ということでしょうか。しかし、ビジネスやプライベートにおいて、基本的なこれらニーズを満たすというよりも、様々な課題や社会の要求が先にあり、ここに立ち返ることはそう簡単ではない気がします。

ビル:だからこそ原則に立ち返る必要があります。『第8の習慣』の中でも述べられているように、これまでに成功した人物は必ずこの4つのニーズを表現した「ビジョン」「自制心」「情緒」「良心」を確立しました。この4つの側面のどれかが高いレベルであれば良いということではなく、すべての側面で自分を高める必要があります。どこかが欠けた極端な事例としてヒトラーがあげられています。

竹村:ヒトラーが「良心」を欠いていたために、後世に正しく貢献できなかった例は分かりやすく読めました。この4つの要素にバランスよく訴えかけたときに、発見した自分のボイスを最も崇高な形で表現できる可能性があり、しかも「良心」が最も重要なことであると私は理解しました。コヴィー博士が「全人格的」と表現した部分のことです。

ビル:『第8の習慣』の中で、「全人格的」なアプローチは根幹をなすプロセスのひとつです。しかも「良心」がモデルの中心にあることに注目すべきです。この「良心」がなければ、いかにすばらしいビジョン、自制心(組織)、情緒(エンパワーメント)があっても本質的な貢献はできません。

竹村:つまり、「貢献する」ニーズから精神的知性(SQ)を呼び覚まし、自分の良心の表現を中心に置きながら、全人格的な表現として、ビジョン、自制心、情緒、良心の4つの表れが、その人のボイスということになるわけですね。

ビル:そのとおりだと思います。

竹村:これまでの概念としては、人間の4つのニーズはあくまで、自分を磨くための側面として捉えられてきましたが、新たに自身の「ボイス」という観点で考えてみると、その意味がより深く、具体的に自分の中で明確になりますね。